2019年01月31日

メモ:   敗血症(はいけっしょう)



■免疫力低下の抗ガン剤はなぜ[敗血症]になりやすいか


私たちの体は初期生体防御と免疫系の働きによって外敵、 異物から守られているわけですが、 侵入してくる外敵、異物の種類や量、 侵入ルートによって、 各防御因子の働き方は違ってきます。

たとえば、 好中球は【肺炎菌】や【緑膿菌】を防いでくれますが、 結核菌やカリニ肺炎から私たちを守ることはできません。

このように状況によって各防御因子の持つ比重が異なることから、 どの病原体(ウイルス、菌など)に対し、 どの防御因子がもっとも効果的なのか、 それがわかれば、 生体防御はより効率的に行えるようになります。


この考え方を私は「生体防御の比重論」と名付けて、 以前から提唱していましたが、 免疫系の働きは非常に複雑なので「そこまで考える必要はないのではないか」という理由から、 なかなか受け入れてもらえないでいました。

ところがエイズの流行から、 思いがけずに、 「比重論」がクローズアップされることになったのです。

エイズも末期になると、 生体防御力が極端に低下します。

そうなると【肺炎菌】や【緑膿菌】などによる[敗血症](細菌が繰り返して”血管”に入る重篤な全身感染)の危険が生じて当然なのです。


ガンでも抗ガン剤を多用し免疫力を大きく低下させると[敗血症]にかかりやすい。



ところがエイズの末期では、 どんなに免疫力が低下しても、 [敗血症]にかかることがない。

この理由は長い間、 謎とされてきました。

それが比重論で簡単に解けたのです。



[敗血症]を生じさせる【肺炎菌】や【緑膿菌】などの防御には好中球の占める比重が大きい。

ところが抗ガン剤を多用すると、 骨髄の機能が破壊されて好中球が減少するため[敗血症]にかかりやすくなる。

ガン患者が[敗血症]にかかるのはこういった理由によるものです。



だがエイズの場合はどうかというと、 T細胞にとりつくだけで骨髄の機能そのものは破壊しません。

だから好中球はどんどん作られるので、 [敗血症]にはかかりにくいのです。

ただし、 エイズの末期にはT細胞とマクロファージが活躍して防ぐ結核菌に対する感染防御力は著しく低下します。





抗ガン剤

  ↓

骨髄の造血機能を破壊

  ↓

・【肺炎菌】 ・【緑膿菌】に感染しやすい

  ↓

肺炎や肝炎だけでなく[敗血症]になりやすい

  ↓

  死


(・『生体防御力』(2003年)  野本 亀久雄 (九州大学名誉教授) 著   ダイヤモンド社  より〜 引用 )

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【著者紹介】 野本 亀久雄
昭和11年、愛媛県松山市生まれ。
昭和36年九州大学医学部医学科卒。
48年同大学助教授。 元生体防御医学研究所所長。
平成7年日本移植学会理事長に就任。

posted by 所長 at 18:45| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする